こんにちは、山本です。
SNS大時代のいま、受験勉強についての情報があふれています。
参考書の選び方。効率的な暗記法。復習の方法。学習計画の立て方。集中力の高め方。模試の復習法。過去問を始める時期。
挙げればきりがないですが、その一つひとつの内容が間違っているとは思いません。
しかし、世の中にある多くの受験論は「あれをやろう、これもやろう」という方法論の詰め合わせになっています。
方法論があれやこれやと「並列で提示されていること」に限界があります。言い換えると、「いつ、どのタイミングでやるべきか」という順序の話が欠けています。
典型例は『効率的な勉強法10選』のような動画や本です。
そこでここからは「あれやこれやの並列型の受験論」と、私が日々の指導で目指している「直列型の受験論」を対比して話を進めていきます。
抽象的な話ですが、人間が「時間軸に沿って成長していく生き物」である以上、直列型の受験戦略を理解しておくべきです。
合格をつかみ取りたい方は、必ず最後までお読みください。
並列型の受験指導の限界
多くの受験指導では「効率のいい、正しいことをやろう」という「方法論の正しさ」に焦点がおかれています。
「正しい勉強法」が存在していて、それをやっていけば合格できるというストーリーです。
– 合格から逆算して計画を立てよう
– 毎日の勉強時間を確保しよう
– 自分に合う参考書を選ぼう
– 効率的な勉強法を身につけよう
– 復習を徹底しよう
– 模試をしっかり分析しよう
– 過去問をちゃんと解こう
– モチベーションを維持しよう
たしかに「正しい勉強法リスト」としては間違っていないかもしれません。
しかし、方法論には「内容の正しさ」と同じくらい「どのタイミングで着手するか」という話が極めて重要です。
プロサッカー選手には有効な練習が、小学1年生のサッカー初心者にも有効とは限らない。というか、多くの場合は「実行すら不可能」です。高確率で大けがを負います。
勉強習慣の無い人が「東大の合格体験記」を参考にして、同じように勉強する。うまくいくわけがない。
これから受験勉強を始める人が「逆算で勉強する」なんてできるわけがない。自分の実力すらわからない人が「自分に合う参考書」を選べるわけがない。
こういう当然の話を無視して「正しい方法論」を提示しても、与えられた受験生側はまったく使いこなせない。やたら勉強法に詳しい「ノウハウコレクター」を生んでしまうだけです。
さらに、並列型の指導では
正しい勉強法を教えた。あとはやるだけだ。もしうまくいかないのなら、危機感が足りない、本気ならできる、覚悟を決めろ
と最終的に「やる気や意志の問題」にスライドするしかない。なぜなら、正しいことは教えたのだから、できないのは本人が悪いと考えるしかないから。
これが僕の考える並列型指導の根本的な欠陥です。
直列型の受験指導が目指すこと
「直列型の受験指導」というのは僕が作った言葉ですが、「あれやこれやの並列型の受験指導」の対になる概念です。
僕の主張を一言でいうと「方法論は、どのタイミングで始めるか(方法論の順序)」が極めて重要だということです。
飛行機が安定して滑空するには、助走→離陸→上昇という過程を順々に経る必要があります。助走せずに、いきなり飛び立つことはできません。
・一日30分も勉強できない人に、「完璧な年間計画」を提供しても実行できません
・集中力がない人に、効率的な勉強法を教えても使いこなせません
そして、直列型の指導では「生徒ごとの今の状況」を把握することが極めて重要になります。しかし、ほとんどの指導者は「生徒が今どんな状況にあるのか」を把握できていません。せいぜい模試の結果を把握しているくらいです。
だから「今のあなたの状況だと、この勉強法が必要だね」というアドバイスができない。というより、「アドバイスのタイミング」を意識すらしていない人がほとんどです。
もちろん僕自身を棚上げするつもりはありませんが、僕は「いつ、どんな情報を伝えるか」をかなり慎重に判断しています。そのために毎週テストをやり、個別指導の中で根掘り葉掘り話を聞いています。
このように、直列型の指導というのは「こうやって指導すればいい」と指導を一般化できません。目の前の生徒を理解しまくり、その理解を基にしてアドバイスをしなきゃいけない。はっきり言ってあまりに大変。
しかし、その分だけ直列型の指導には奥行きがあります。「時間」という軸がある分、指導の難易度は上がりますが深みが出てきます。
何より、生徒のみなさん側も「たしかに、これは今の自分に必要だ」という納得感を得やすい。
ここに、直列型指導の可能性があります。
勉強の「正しい順番」を大切にする
勉強が続かない人は、やる気がない訳でも、意志が弱い訳でもありません。
タイミングを無視した「正しい勉強」によって、無理ある勉強を「最初から全部頑張ろう」としてしまっているだけです。
「勉強習慣がない人が、いきなり東大合格者の勉強取り入れても無理に決まっている」という先ほどの話です。
だからこそ、最初に必要なのは「続かない勉強をやめる」ということです。やる気や気合いで無理のある勉強を続けることではありません。
多くの場合、勉強が続かないのは「2つの自分」を軽視していることに起因します。
①今の自分の「条件」を軽視している
多くの人は「そもそも、自分はどれくらい勉強できるんだ」をわかっていません。さらに「いまの自分の学力ってどんなもんだ」もわかっていません。
たしかにこれらを正確に把握することは難しいですが、それでも「自分の現在地」を知らないことには何も始められません。
– 実際に使える時間
– 現在の勉強習慣
– 集中が続く時間
– 現在の学力
– 苦手なことへの抵抗
– 一度計画が崩れた時のリカバリー力
こうした現在の条件を無視し、「これくらいやりたいな」という理想を前提に計画を立ててしまう。結果として、現実と乖離した計画になるため挫折につながる。
今の自分を無視して作った「計画」は、計画ではなく願望にすぎません。
②今の自分の「課題」を軽視している
「今の自分はこれが課題だ」という話を無視し、一般論として「正しいと言われている勉強」をこなしても結果につながりません。「ただやっているだけの勉強」だからです。
– なぜこの勉強が必要なのか
– 何を解決するために取り組むのか
– 自分には何が足りないのか
– なぜ間違えたのか
– なぜ同じ失敗を何度も繰り返しているのか
自分の課題に合っているかを考えないから、いまいち納得感がない。納得感がないから色んな情報に浮気し、少しうまくいかないだけで手が止まります。
「正しい勉強」は必ず後からついてくる
仮に不格好で非効率な勉強だとしても、勉強を続けていく中で必ず受験勉強への解像度が上がります。
・実際に勉強してみると、思ったよりも暗記ができないな
・数学が得意だと思ってたけど、学校の勉強と入試はだいぶ違うな
こんな感想が必ず出てきます。そうすると、
・「復習が大事らしい」という誰かの言葉が、一歩進んで「どんな間隔で復習していけばいいんだろう」に変わる。
・「どうやって勉強しよう」という漠然とした疑問が、「こんな難しい問題が解ける合格者たちは、いったいどんな風に勉強してたんだ」に変わる。
自然と好奇心が出てきて、疑問の解像度が上がる。疑問がはっきりするから適切な情報収集ができる。
実体験に基づかない「漠然とした疑問」だけの人に、情報を与えても記憶に残りません。
つまり「正しい勉強法」とは、自分の実体験に基づく、内側から湧いてくる疑問が生じたときに摂取すべきということです。
こうした「疑問が生じる実体験」を順番に提供しようとするのが「直列型の指導」です。
くれぐれも、「今の自分にちょうどいい勉強をやればいい」という甘えた指導ではありません。ちょっと背伸びをした目標を掲げながら、自分の可能性を拡張していきます。
また、「根性はいらない」と言う話でもありません。最終的には、負荷の高い勉強も長時間の演習も、本番へのプレッシャーに負けない気持ちも必要です。しかし、一番最初から「根性が必要」という話ではないということです。
根性も「後から自然についてくるもの」です。小さく始め、実際の自分を知り、課題を設定し、一つずつ試行錯誤していく。
その順番を守れば、勉強は続き、続くから質が上がり、質が上がるから結果が出ます。
では、今回の記事はここまでです。
今回も長文になりましたが、最後までありがとうございました。

